発達支援の立場から人権感覚を育てる子育てについて考えてみたいと思います。
私は、 人権というものは他者を尊重すること、 そして人のつくりあげたさまざまな尊いもの=英知を尊重する態度だと考えています。
基盤となるのは自分が尊重されているという実感を持ち、 自分の存在を肯定できることだと思います。
「自分の存在を大切にされたヒトしか他人を大切にはできない」 ということです。
「自己肯定感」 という、 この育ちをどのように導いていくかが子育ての大きな課題です。
発達障害について知られるようになってきました。 刺激の受け止め方や感じ取り方が独特であったり、 能力的な凸凹が大きいために社会生活の中で苦労しがちな人たちです。 自分の思いを正確に伝えられなかったり、 相手の気持ちや立場を理解した行動がとれないため、 特にコミュニケーション面でアクシデントが起こりがちです。
幼稚園・保育園の時代から集団参加に課題が生じることが多い彼らをどのようにサポートしていくかは教育・発達支援の大きなテーマのひとつになっています。
支援のポイントのひとつは、 彼らの特性をよく理解し、 彼らがわかる手段でうまく参加ができるようにサポートすること。 彼らの好きなことや得意なことを理解してそれを活かす支援をすることです。
例えば、 言葉の理解や使用、 それを記憶しておく能力に課題がある子が多いのです。 だから手順やすべきことを文字や絵、 写真などで示す。 視覚的なことはあとから確認できます。
動きの多い、 落ち着かない子がいます。 けれども、 活発だ・エネルギッシュだと捉えてその力を伸ばす支援をしたらどうなるでしょう?支援ポイントのもうひとつは周りが特性ある育ちを包み込み暮らしていくことです。
以前、 ある幼稚園で素敵な実践を見ました。
クラスでの運動ゲームの活動で、 発達障害の傾向のあるAくんがちっとも参加してくれません。 みんなの所に来てくれないのです。
先生が呼びに行きます。
友達が入れ替わり立ち替わり呼びに行きます。
けれども、 Aくんはちっとも動きません。
そこで担任の先生は 「みんな、 Aくんの所にいくぞ!」 と声をかけAくんを呼ぶのではなく、 Aくんの周りにみんなを集めたのです。
すると、 Aくんは嬉しそうにゲームに参加をはじめました。 みんなに包み込まれたAくん。
ここではAくんの存在は肯定されています。
関わりが上手でないAくんにこそ大切に関わることが意味です。
このように発達障害だけでなく、 ヒトの育ちは多様です。
そして、 すべてのヒトにとって生きていくのが難しい、 ヒトと関わることが難しい時代になってきました。
その中で 「自己肯定感」 を紡ぎ出すためには、 多様な育ちを認め、 あたたかく包み込むような関わりをしていくこと。
注意叱責ではなく、 好きや得意を生かした子育てをしていくことが大切だといわれています。
モノやコトが豊かになると関わりが減ります。
関わりをどう生み出していくか?
よき関わりをどう意図的につくっていくかが人権感覚を育てるポイントなのだと思います。
(島田市 駿遠学園主任児童指導員)