暗号と少年


■登場人物
○主人公……山田工(やまだたくみ)
男、中学一年生。
父、母、工の三人家族
口癖は、「普通」
小さい頃、剣とよく暗号遊びをしていた。小学校に上がった時から、周りを意識するようになって剣から遠ざかった。
昔のあだ名は、えーくん。

○主人公の元友人……三菱剣(みつびしけん)
     男、中学一年生。頭脳明晰。
     父(海外出張)、母(社長)、兄(東大)、
     剣の四人家族(金持ち一家)
     昔のあだ名は、つるぎくん。
○謎の声……二人を拉致したと思われる声(変声樹で変えられた声)
○工の母
○剣の母

■倉庫

暗号と少年

周りには、倉庫と思われる赤いポールや梯子等が置いてある。

暗い中、滴が落ちていく音が聞こえる。
そこでライトが工と剣に向けられる。
二人は、眠らされて床に横たわっている(塾の帰りなのか、私服姿で鞄が隣に転がっている)二人と反対側にラジカセが置いてある。
工が寝返りを打って、剣を蹴る。

剣「痛っ」

起き上がる剣。周りを見渡す。

剣「!」
隣の工の腹を蹴り起こす。
工「いったあああ!」
蹴られた腹を押さえて上半身を起こす工。隣にいる剣を見て
工「ええええ!? 三菱くん!?」
剣「そこかよ。驚くところは(呆れて)」
工「え?(そう言われて周りを見る)ええええええええええ!? どこここ?」
剣「……どうやら俺たち、誘拐されたみたいだ」
工「ゆゆゆ、ゆうかい?」
剣「そう、誘拐」
工「でででも、僕んち、父は公務員の母はパートのごく普通の一般家庭なんだよ? お金なんて……」
剣「……」

無言で倉庫内を調べる剣。

工「そっか。三菱くんちは普通じゃなかったね。ごめん」
剣「……どうせ三菱家の金目当てだろう」
工「僕たち殺されちゃうのかな?」
剣「……少なくても、身代金を奪うまでは殺されないと思う」
工「じゃあ、身代金手に入れたら?」

わからないと首をふる剣。

工「そんなあ……」

すわりこんでベソをかく工。倉庫内を探している剣はラジカセに気付いて持ってくる。

工「チーン(鼻水をかむ音)どうしたの? それ」
剣「そこにあった」
工「押してみる?」
剣「ああ」

カチッと音がなり、カセットが回りだす。

謎の声「こんにちは。三菱剣君。山田工君。私があなたたちを拉致しました」
工「これは!」
剣「犯人の残したテープで間違いないな」
謎の声「当初、三菱君だけを拉致するつもりでしたが、手違いで山田君にも来てもらいました」
工「やっぱり、僕は関係なかったんだ」
剣「……悪いな。俺のせいで巻き込まれて……。お前の大好きな『普通』から離れてしまって(ちょっとトゲのある感じ)」
工「い、今頃は、普通に家で家族そろってご飯食べてるハズだったのに……」
剣「悪かったな(あっさりと)」
工「なんで三菱くんはそんなに冷静なの?」
剣「あいにく、俺の普通はこんなもんだからな」
工「変」
剣「……」
工「普通は僕みたいに、パニックになって、泣きじゃくると思うけど……」
剣「お前は、最近そうだな」
工「え?」
剣「普通、普通って。俺の普通もお前の普通も違うの当たり前だろ? 違う人間なんだから」
工「でも、普通は!」
剣「うるさい!(怒る)」
工「!」
剣「お前の普通を俺に押し付けるな」
工「……ご、ごめん」
剣「……」
工「……」

ガーと再びラジカセの音が鳴り始める。

謎の声「あ、言い忘れていました。あなたたちにチャンスをあげます。ゲームをしましょう。あなたたちのポケットに暗号を入れておきました。それが解けたら、あなたたちの勝ち。無事に出してあげますよ。でも、負けたら……。くくくく、結果を楽しみにしていますよ」

二人ともポケットを突っ込んで紙をだす。工の紙は横に『梨の絵126耳の絵5』と書いてある。
剣の紙は横に『ひなきょうのはん』と書かれている。

工「あった。僕のは、梨の絵に126に耳の絵、最後に5が書いてある」
剣「……ひなきょうのはん」
工「え?」
剣「俺の方の暗号」
工「どうしようか?」
剣「解くしかないだろ?」

そう言って、床に転がっている鞄からペンを取り出す剣。

工「そうだね」

工も鞄からペンを取り出す。
二人とも自分の持っている紙を解こうとする。

工「……そういえば、小さい頃よく、二人で暗号作ったり解いたりして遊んでたね」
剣「……そうだな」
工「懐かしいな。剣くんは『つるぎ』って漢字を書くから、つるぎくん」
剣「お前は、片仮名のエって書いて工だから、えーくんだったな」
工「これも二人で考えた暗号、だったね」
剣「ああ……」
工「……」
剣「なあ、お前……」
工「え?」
剣「クラス委員の花園香苗が好きだろ?」
工「えええええ!!! ど、どうして(明らかに動揺して)」
剣「メールアドレス」
工「わーーーー!」

工は耳を押さえて「わーわー」言い、聞こえないふりをする。

剣「お前、TU5RGってメールアドレスに入れてるだろ」
工「わーーーー!」
剣「あれ、パソコンのキーボードに印字されてる英字とかな文字を合わせればすぐわかる。Tは「か」Uは「な」5は「え」Rは「す」Gは「き」」
工「……あーー、恥ずかしい……(小さくなって携帯をいじる)」
剣「見つけた俺も恥ずかしかった」
工「……すぐ変えます。……あ、そう言えば、暗号とけた?」
剣「いや。お前は?」
工「え、僕? うーん。なんとなくこうかなって思うのは出たけど、意味がわからなくて」
剣「確か、梨の絵と126という数字と耳の絵、5だったな」
工「うん」
剣「俺もそれは解けた」
工「ええええ!」
剣「そんなに驚くことか?」
工「いえ」
剣「答え合わせをするか」
工「……うん、そうだね」
剣「まず、数字が入っていることから、これらは全て数字に置き換えることができることがわかる」
工「梨の絵は、そのまま7と4!」
剣「耳の絵は3」
工「え~、耳だから33じゃないの?」
剣「この絵をみると、ただの3に肌色を塗っただけだ。耳というよりは、そのまま素直に3ととるだけでいいと思う」
工「じゃあ、続けると7412635! でも、いったいなんのこと?」
剣「さあな」
工「そこは、つるぎくんでもわからないか」
剣「!」
工「? どうしたの?」
剣「いや……。……そういえば、山田が誘拐
されたのは、よきせぬアクシデントだった
んだよな」
工「うん。犯人はそう言ってたけど……」
剣「でも暗号は二つ分。おかしくないか?」
工「え? 何が?」
剣「この暗号はパソコンで打たれていた。前
からこの暗号は作られていたことになる」
工「え? だから?」
剣「だから、この暗号は、前もって用意されていたんだ。もし山田が居なかったら、俺のポケットにはこの暗号が二つ入るはずだった」
工「あ! ということは!」
剣「今は別々に解こうとしていたが」
工「もともとは、二つで一つの暗号かもしれないってことだよね!」
剣「そうだ」
工「つるぎくんの暗号は、ひなきょうのはんだったよね」
剣「ああ」
工「ねえ、ひなきょうのはんも7文字だよ」 
剣「7桁の数字と7文字の暗号」
工「当てはめてみようよ! ひは7でなは4。きょは1でうは2!」
剣「のは6、はは3、んは5……」
工「え……、ねえ、これって」
剣「まさか……」
倉庫の外でこそこそと声がする。
工の母「もう少しまった方が……」
剣の母「もうだめ! 我慢できない!」

突然、倉庫のドアがガラッとあいて、剣の母がしゃべりながら出てくる。

剣の母「もう!!! 何何? じれったいわね! 答えを言いなさいよ! 答えを!」
剣「やっぱり……」
工「え? え? つるぎくんのお母さん?」

工の母も話しながら入ってくる。

工の母「ああ~、バレちゃった~」
工「ええええ? 母さんも??」
工の母「あら、やだ。たーくんたら、まだわ
かってないわ~」
剣の母「剣! ほら、工君に教えてあげなさい!」
工「つるぎくーん」
剣「お前、暗号は解けたか?」

すかさず、剣の母が剣の頭をブツ!

剣の母「人さまの子に向かって、お前って、
夫婦でも言われたら、冷めるわ!」
剣「……やまだ」
工「何?(母と同時)」
工の母「な~に?(工と同時)」

再び、剣の母が剣の頭をブツ!

剣の母「年上を呼び捨てにしない!」
工の母「あらあら、ひょっとして、たーくんのことだったのかしら。おばさん、勘違いしちゃったあ~」
剣「……たくみ(小さい声で)」
工「え? 何?」
剣「工は、暗号解けたのかって、聞いてるんだよ!」
工「え、あ、うん。7412635に当ては
めた文字を1から順番に言えば良いんだよね?」
剣「ああ」
工「1は、きょ。2は、う。3は、は。4は、
な。5は、ん。6は、の。7は、ひ」
剣「つなげたら?」
工「『今日は何の日?』」
剣「工。誕生日いつだっけ?」
工「え? 僕の誕生日? 十二月二十五日……って、ええ?」

パーンとクラッカーの鳴る音。(工母と剣母が鳴らす)

工の母&剣の母「ハッピーバースデイ!」
工の母「たーくん(剣の母と同時に)」
剣の母「工君!(工の母と同時に)」
工「えええええええええええええ!」
剣「ということだ」
工「えっ、えっ。何が?」
剣「これは、全部この2人がしたことだ」
工「え? じゃあ、あの犯人の声は?」
工の母「あら、たーくん。気付かなかったの~? あの声は、わ、た、し、よ~」
工「ええええええ! 母さん!? だって、しゃべり方が……」
剣の母「そうよね! ビックリするわよね!全然違うんだもの! 私、工君のお母さん、女優になれると思うの!」
工の母「そんな~。ほめすぎよ~」
剣の母「私は本気よ。本気で女優デビューしない? 私がマネージメントするわ!」
工の母「ええ~。どうしようかしら~」
剣「……、あの!」
工の母「あら、けんちゃん何?」
剣「なんで、こんなことしたんですか?一歩間違えば、警察沙汰ですよね」
工「そうだよ、母さん! なんで、こんなこと……」
工の母「うーん。理由はそうね。最近、たーくんがツマラナソウだったからかしら~」
工「え?」
剣の母「そうそう。剣も最近、家では口もきかなくなって! 昔はあんなに楽しそうだったのに」
剣「……」
工の母「そうそう! それなのよ! 私も昔は楽しそうだったのに~って思って。何が足りないのかな~って、考えた結果。けんちゃんが足りないって、気付いたのよ~」
剣の母「だから、これが」
工の母「お母さんからのバースデイプレゼント~って☆」
剣の母&工の母「ね~!」
剣「なんで、母さんまで」
剣の母「あら、そんなの決まってるじゃない。
面白そうだからよ!」
剣の母&工の母「ね~!」
剣「……ごめんな。工」
工「え?」
剣「お前が普通にこだわる理由、なんとなく
わかった気がする(普通の親がほしい)」
工「あ、うん。僕もつるぎくんの気持ち、少しわかったよ(これが、つるぎくんの普通……)」

鞄などをとり、帰る準備をする2人。

剣「普通ってなんだろうな」
工「うん。なんだろうね……」
剣「工、お腹すいてないか?」
工「すごくすいてる!」
剣「マック行こうぜ」
工「賛成!」

まだきゃっきゃと、話をしている母親2人を残して、立ち去る2人。
舞台が暗くなって、携帯の着信の音がなる。

工(声だけ)「つるぎくんへ、FROMたくみ携帯のメールアドレスを変えました。再登録をお願いします。
追伸、昨日はありがとう。また、マック行こうね!」



餃子
餃子(2014-01-27 13:00)

誰か聞いてよ!?
誰か聞いてよ!?(2014-01-13 13:00)

ミルククラウン
ミルククラウン(2013-12-02 13:00)

つる
つる(2013-11-11 13:00)

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