「子どもの幸せを願う親のはずが…」 河村 多美子

じんちかい

2015年03月20日 12:00

私は38年間、 元気いっぱいの子どもたちに刺激をもらいながら、 楽しく充実した学校生活を送ることができました。 この間、 保護者の方々にもずいぶん助けていただいたことを今有り難く思い出します。



ところが、 現在の仕事場では、 あまりに複雑な家庭環境におかれている子ども、 本人自身問題を抱えている子どもが多く、 支援の難しさを感じないではいられないのが現状です。

本来、 幼い子どもであっても、 立志した子どもであっても変わりなく、 子ども一人一人の人権は、 親を初めとして、 子どもを取り巻く大人たちによって大切に守られなくてはならないものであると思います。

しかし、 昨今、 親の身勝手等によって子どもの大切な人権が奪われてしまっている現実をよく耳にします。 私が関わっている子どもの中にも同じ問題を抱えている子どもがいます。

Aさんは、 数年間学校生活を味わうことができず過ごしてきました。 本人は、 学校に行きたい気持ちが十分ありますが、 制服や鞄、 靴等がなく行くことができないでいたのです。 義務教育であるにもかかわらず行くことを許されないのです。

親に、 「学校に行って勉強がしたい。 会話したい。 遊びたい」 「学校で必要な物を買って欲しい」 等と、 望んでいることを伝えることもできないのです。 日常生活の中でも、 買って欲しい物を買ってもらえず、 食べたい物も自由に食べられず、 不満だらけの生活をしているのです。

この子が大人になった時、 この不満だらけの生活の中で育った心が、 どのような姿となって現れるのかとても心配です。 また、 この子が親となって子育てをした時、 自分の親と同じように我が子の自由や権利を奪ってしまうかも知れないことを考えると恐ろしくなってしまいます。

どこかで、 誰かが気づいて、 手をさしのべてあげないと……とは思うのですが、 あまりに大きな課題でどうしてよいかわからないというのが本音です。

教育を受ける権利も、 親にわがままを言う自由も与えてもらえない子どもがいるなんて、 今までの私の常識の中では考えられない現実でした。

今まで私が出会った子どもたちの中には、 貧しい家庭の子どももいましたが、 誰一人として学校に行かせてもらえない子どもはいませんでした。 子どもの教育を受ける権利を奪ってしまうような親は一人もいませんでした。

たとえ親といえども、 我が子の自由な思いや願いを奪うことは絶対に許されることではないと思います。

どの子にも、 幸せになる権利、 可能性が与えられているのです。
このことを全ての大人たちが心に留めておくべきだと私は思います。
(適応指導教室教育相談員)

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